愛逢月 

『あともう少しで着く』


素っ気なく見えるメール文だけど、昨日は遠足が明日ある小学生並みにワクワクしている。実際、どきどきし過ぎて眠れなかった。

まあ、大学生になってから真太郎と会えなかったし、仕方ないよな、うん。

ソワソワする俺は、久しぶりに東京の地を踏みしめた…といっても、まだ駅のロータリーだけど。

うわぁーやっぱりこんな時間帯でも、人がめちゃくちゃいるよ。

人の波に揉まれつつ、俺は真太郎との待ち合わせ場所を目指す。こうして会うのは約半年ぶりか。俺と彼の付き合いはもう一年経った。


「おー真太郎ー!」

「っ!京介、久しぶり」

「久しぶり!また身長伸びてねえ?」

「京介が縮んだだけなのだよ」

「ああん?」


近況報告やくだらないことを喋りつつ、俺と真太郎は適当にぶらぶら歩く。すると、目の前に大きな笹が設置されていた。

ああ、そういえば今日は七夕か。真太郎を知ってから、もう七夕より誕生日というイメージが強い。

笹の葉には、色とりどりの短冊や飾りが付けられていた。その周りを長机が囲んで、上にはペンと紙が置いてある。なるほど、願い事かけ放題ってことか。


「真太郎ーなんか願い事しよう!」

「願い事か…」

「はい、緑色」

「何故緑なのだよ…」

「真太郎といったら緑だよ?」


真太郎は理解できなかったのか、首を傾げつつ綺麗な手ですらすらと書いていく。んん…俺はどうしよう。


「できた」

「なんて書いたー?」

「インターハイで優勝、なのだよ」

「えー!俺と同じだと思ったのに〜」


ぺらっと紙を見せると、真太郎は耳を真っ赤にさせて「そんなの、絶対に叶うだろう」と言った。さすがツンデレ、だがそこがイイ。


俺達はそれぞれ短冊を笹に付け、また歩き出した。


【真太郎とまた7月7日に会えますように】

【京介と来年の七夕の日に逢えますように】

Happy birthday Midorima!!!

愛逢月…七夕のこと


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