愛の夢
こわい夢をみた。そう告げる火神の唇を、じっと僕は見つめていた。小さく震える火神の手を優しく、優しく包み込んでやる。
どうか、僕のものになってほしいと願いながら。
「黒子が……黒子が俺を…!見捨てて、どっかに…行く夢でっ…」
「大丈夫だよ。黒子は火神を見捨てたりしない。お前らは切り離せない関係なんだから」
「そう、か……。そうだよな…」
「うん。そうだよ」
瞬きをする度に落ちる涙を、僕は一滴も残さず飲んでしまいたいと思った。こうやって、火神をぐすぐすにする黒子を妬ましくなった。
「可愛い」
「京介…?何か言ったか?」
「ううん、何でもない」
僕も君をぐずぐずにさせて、焦がしてやりたい。燃え上がる嫉妬で、僕は息ができなかった。
フランツ・リスト『愛の夢』
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