しっかり者の弟は、僕の自慢なんだ。小さい頃はあんなに引っ込み思案で、ハルちゃんに怯えていた割には、今となったら普通に接してる。
それに、僕より身長を追い越して顔が可愛いよりカッコよくなって……まるで別人みたい。


「そう思わない?レイちゃん」
「僕は柊君の昔なんて知りませんから何とも思いません」
「なんだよー!レイちゃんのカナヅチ!」
「なっ!!それは今の話と関係ないでしょう!?」
「関係あ、ぐえ」


突然、首根っこを引っ張られて変な声が出ちゃった。こんな乱暴なことをする奴は一人しかいない。
ちらりと振り返れば、見慣れた顔があった。やっぱり柊だ。


「全く、竜ヶ崎君に迷惑をかけたらダメだよ渚」
「だって……」
「柊君、その行為は危険です。もし気道に入ってしまったら、窒息死してしまう」
「……そう。それはごめんね渚」


面白くなさそうな顔をして柊はパッと手を離した。ほんと、素直じゃないよなあ。
レイちゃんも安心したのか顔の強張りを解いた。そのまま離れようとする柊の袖を掴むと、しかめっ面になった。うわ、ひどい顔。


「なに、渚。僕急いでるんだけど」
「今日は何時に終わるの?」
「……19時」
「わかった。またね」
「…………………」


柊は何の挨拶もせずに去ってしまった。ありゃりゃ、相当拗ねちゃったのかな?
苦笑してる僕を見て、レイちゃんは変なものを見るような顔になった。


「怒らないんですか?」
「んー別にいいんじゃない?」
「別にいいって……」
「大丈夫大丈夫!僕たち双子だからさ、すぐに解決できちゃうから!」
「そんなことなんでしょうか?」


そんなことなんだよ。僕と姉ちゃんが喧嘩してたら、仲裁しようとして巻き込まれちゃう可愛い弟。
ま、レイちゃんと一緒だよ。そう言ったらレイちゃんは、不思議そうに首を傾げた。




「やだ」
「何が?」
「ナギが……、竜ヶ崎君と仲良くするの」
「えーだって、水泳部の中ではレイちゃんしか1年生がいないしー」
「……でも、うう…」


家に帰ったら学校での態度が反対になる。あんなにつんけんしていたのに、家ではでれでれに甘えたになるんだ。
今も一緒の部屋で柊が僕の背中に抱きついている。えへへ可愛いな。


「可愛いねえ」
「えっ、竜ヶ崎君が!?」
「確かに面白くて可愛いけど、僕が言ったのは柊のこと!」
「……複雑だ」


もごもご背中に顔を当てながら言うから、何言ってるのか分からない。聞き返しても聞かなくていいって言うし。


「僕はずっと柊が一番だよ!柊は?」
「……僕、も同じ」
「へへへ、ならいーや」


双子なのに身長も顔もちょっと違うけど、僕たちの仲はずっと変わらない。今も、昔もずっと。


輝き続けるジェミニ
(お互いが一番なのは今も昔も)

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