「エレン、焼きそばパン買ってきた!」
「ん、サンキュー」
「こ、これで付き合ってくれるの?」
「考えとくー」
「そっか、わかった!」

それから2週間、何も返事がない!!僕は今まで忠犬8公のように、エレンへ忠義を果たしてきた。
小さなことから例を挙げれば、掃除当番を代わってあげることから、リヴァイ先生の数学の宿題を解くことまで……などなど。
いい加減、尻尾を振るのにも飽きてきたし、そろそろロールキャベツの肉を剥き出しにしてもいいよね?

いつもエレンは屋上でご飯を食べている。今日はミカサちゃんとアルミンがいない。チャンスだ。
壁にもたれ掛かって食べる行儀の悪いエレンに苦笑しながら、話しかけた。

「ねえエレン、あの返事考えてくれた?」
「あーうん」
「……ほんとに?」
「…うるさいな、だいたい俺たち男だろ。柊、いい加減目を覚ませよ」

……なんだよそれ、僕が夢見がちな奴じゃないか。透明な滴がぽとぽととエレンの頬に落ちる。
大きな目を見開いた彼は、僕に座るように言った。でも、僕は座らない。座ったらエレンを見下ろせないから。

「なんで泣くんだよ……」
「だって、エレンが好きなんだ…っ!ぼくは変かもしれないけどっ、どうしようもないくらい好きなんだよ!」
「だからって…」
「……ごめん、ごめんね。もう言わないから。……エレンの前から、消えるから」
「は?ちょっと、柊!!」

なーんて嘘だけど。エレンに背を向けて扉に向かおうとするが、彼の手によって阻まれた。
ぎゅうと握りしめられた左腕が痛い。まったく、少しは力加減してよ。

「待てよ、柊。話が終わってねえだろ」
「……いやだ、離して」
「ああくそ!柊を見てると俺が俺じゃなくなるっていうか…わけわかんねえんだよ」
「エレン…?」

切なそうに叫ぶエレンの方を振り向くと、彼の逞しい腕に抱きすくめられた。
温かい。

「エ、レン…?」
「よくわかんねえけど、お前が好きなんだ…と思う」
「なにそれ。さっきは目を覚ませよって言ったくせに」
「ちがっ、あれは……柊が好きだって言ってくれて、恥ずかしかったんだよ」
「……エレン、ちょっと屈んで?」
「こう、か?んっ、ふ…」

身長が頭ひとつ小さいだけで、満足にちゅーできないなんて不便だよなあ。
エレンの柔らかい唇を食みながら、幸せを噛み締める。あまい、しあわせだ。

「これからは絶対逃がさないから」

にっこりエレンに微笑むと、何故か彼の顔がりんごみたいに赤く染まった。ほんと、かーわいい。



ぺろり、と。
(固唾を飲み込んだのは誰か)

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