君の瞳に告ぐ
※6巻あたり
「話って何かな?」
人気のない階段の踊り場にて、私と帝人君は居た。帝人君は何も知らない様子で、私についてきた。
「あの、さ……」
ちらりと帝人君のブレザーのポケットから出ているボールペンを見てしまった。私の身体が強張ったのを見て、帝人君は「どうしたの?」と至って平然とした態度だ。
「あっ、いや、なんでもない!」
「そう?それで……話って?」
「あの、ね…見ちゃったの。青葉君の手に、ボールペンが―――」
「見ちゃったんだ?」
「う、うん。なんであんなことをしたのか聞きたくて!だって、帝人君ってそういうことしなさそうだし、それに…!」
続きの言葉を言えなかった。何故なら帝人君が私の目に、ボールペンの先を突き出しているからだ。青葉君の手に貫通しているのを思い出し、私は動けなかった。
帝人君は普通だった。口元はにこにこしているが、目は、笑っていなかった。ヤバい。私は直感的に感じた。
「名前さんは、見たんだね?アレを」
「は……はい」
「そっか。見ちゃったなら仕方ないよね」
「みか…ど…く……」
帝人君がボールペンをさらに近づける。喉がカラカラになって、目の前がボールペンの先しか見えなくなる。やだ、やだやだやだ怖い怖いよやだいやだいやだいやだ怖いここで死にたくない私は死ぬのか?死にたくない!嫌だやめてやめて!!
「名前さん、あのことは言わないって、誓ってくれる?」
「……は、い」
「よかった。名前さんが物分かりがいい人で助かったよ」
「……………………」
帝人君の手が離れていく。その代わりに帝人君の顔が近づいてきた。ボールペンの呪縛が解かれなかった私は、また動けなかった。
「誓いの印をつけよう」
「いっ…!」
がぶりと帝人君が私の首に噛みついた。痛い、血が出ているんじゃないの!?涙がぽろぽろ出てきた。帝人君の顔が離れていく。私は顔を伏せ、涙を拭うがぼたぼた落ちていく。
「ふふ、名前さんって可愛いね。泣き顔が」
「うぇ…ひっぐ……ひど……い……なんで…!」
「あはは、そんなに褒めたら、」
ボールペン、刺しちゃうかも
その言葉に私は反射的に伏せていた顔を上げ後退するが、歪んだ笑顔が近づいて重なった。
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