短編 進撃 | ナノ

死んでしまったあのこ

※現パロ



最近、誰かにつけられている気がする。自意識過剰とかそういう類いじゃなくて、ほんとに。
なんて、真剣な顔をしてたらライナーに一笑された。彼の隣に座るベルトルトには、苦笑いされた。

「ナマエ…それは明らかに自意識過剰だ、気のせいだ」

「ライナーの言う通りだよ」

「ちえーなんだよ、ベルトルトまで!俺はベルトルトは信じてたのに」

「は?おいおい、俺はどこいった?」

知らねえよ、犬でも食ったんじゃねえの。ライナーを無視して遠慮がちに笑うベルトルトをじっと見ていた。



夜、やはりつけられている気がする。パッと振り返っても、人影ひとつも見当たらない。
ため息を吐いて、目の前の景色を見る。暗がりで街灯はあまりない。足音を立てずに歩くのは難しいものだ。
俺が止まると、つけてる奴も止まる。靴音がバレバレなんだよ。つうか、つけるなら靴音くらい消せよ。バレちまうだろ。
猫背で俯きながら歩く、歩く、歩く。仕方ない、地理に疎くなければいいなと祈りつつ、真っ直ぐ進む道を反れて角に入る。
そこの壁に背中を預けて息を殺し、迎え撃つ。どきどき煩い心臓を抑えて待つと、曲がってきた。

「捕まえた」
「っ!?」
「お前、どこのどいつだ……って、ベルトルトかよ」
「…ごめん」

フードを剥ぎ取ると眉尻を下げたベルトルトが出てきた。なんでだよ、と突っ込むのをやめて事情を問い質す。

「なんで俺を尾行してたんだよ」
「そっ、それはこっちのセリフだよ!なんで、なんで…ナマエはエレンを尾行するんだ」
「…………はあ?別につけてねえよ」
「僕たち、エレンに相談されたんだよ。誰かにストーキングされてるって。でも、警察に言っても男だからって取り合ってくれない。だから僕たちが見張りしてた。そしたら……ナマエがストーカーだった。ねえ、そういえばライナーを知らないかい?」

長い説明を終えたベルトルトはほうと一息吐いた。俺は彼と正反対で、頭が混乱してパニックを起こしていた。
俺が、エレンを?違う、違わない、いやでも。事実としてベルトルト達が裏付けて、いや、もしかするとベルトルトが理由を正当化させようとしているに違いない。

「ライナー、なんて知らねえな」
「…そっか。ナマエ…そろそろこの首に回した腕、退かしてくれないかな?」
「ベルトルト」
「な、なに?」
「嘘つきだな、お前。俺とエレンは親友なんだから何故つけなきゃいけねえんだ。第一、俺にはそんな記憶が微塵もない。それにエレンに好意を抱いてない。だから俺は違う。なあベルトルト、嘘を吐くのは辛いだろ。もうやめろよ」

ぐっとベルトルトの首に回した腕へ力を入れれば、彼は苦しそうにむせる。ああ、この感覚を俺は覚えている気がする。

ベルトルトが苦しそうにうめき声を上げるが、周りに人の気配すら感じられない。なあ、エレン。俺は……ストーカーじゃないよな?


「ああ、もう、」


死んでしまった。



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親友と勘違いしちゃってる主人公と、ストーキングされるエレンと、ストーカーの主人公を捕まえようとするが犠牲になるベルトルト

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