短編 進撃 | ナノ

隣人を愛せ

※隣人を疑えの続き


ジャン先輩は可愛い。ミカサ先輩に対してずっと報われない恋慕を抱き続けてアタックを繰り返していたけれど、結局僕に取られてしまって、最近はつんけんしてくる先輩マジ先輩可愛いすぎるんだけど、ミカサ先輩ももちろん可愛いし大好きだけど、ジャン先輩への好きは何かが違うと思うんですけど、なんだと思いますか?


そこまで長い台詞を言い切っても、ジャン先輩は思考回路が切れてしまったのか動かない。どうしたんだろ、可愛いなあ目を舐めたい。あ、舐めちゃった。突き飛ばされた。痛い。


「おま、お前きもちわりいんだよ!!ミカサのこと、もう諦めてたのにお前は俺が好きだ?意味わかんねえしきめえよ!あり得ねえ!!もう、もうやめてくれよ……!俺につきまとうなよ…!!」


ぼたぼた、ぼたぼた。組み敷いたジャン先輩の綺麗な目から、涙が溢れている。ああ可哀想で可愛い、ジャン。


「先輩、かわいそうですね」

「……っ、死ね!お前なんかっ、死ねよ!!このストーカー!クズ!」

「わかりました。今からちょっと死にます。あ、遺書とか書いた方がいいんですかね」

「は…?」


ぽかんとした先輩の顔、ちょう可愛い。その赤い口に舌を突っ込んでぐちゃぐちゃにしてやりたいところだがグッと堪えて、平静を装う。


「だって今から死ぬんですから、書いた方がいいですよね?あーでも書いたことないからなんて書こうかな……」

「お前、マジで死ぬ気かよ……っ!」

「ええ、まあ。大好きな先輩に死ねと言われたら、死なずにはいられませんよ」

「はあ…?意味、わかんねえ……」

「とりあえずチラシでいいか。えーっと、フラれたので死にます。ミカサごめん、っと」


黒い太ペンで書き終えた。おー、我ながら上手く書けたな。自画自賛していると、ジャン先輩に引ったくられた。え、ちょっと。

文面をジッと見た先輩は、遺書を勢いよく縦に破り始めた。え〜せっかく書けたのに。まあこれが狙いだったけどさ。


「ジャン先輩…?」

「ナマエ…お前が死ぬのを、俺は許さねえからな」

「……えーっと、嫌です」

「は、はあ!?お前、この俺が心配してやってんのに、っぐう……!」

「先輩、俺はそういうの望んでないんですよ。わかりますか?先輩って頭いいのに、たまに恐ろしいくらいバカだからなあ。まあそこもいとおしいですけど。さて、ジャン先輩」


俺を愛してくれませんか?

そう尋ねたら俺に首を絞められているジャン先輩は途切れ途切れに「死ん…でも……っ、断る…!」と拒否した。

ああ悲しいことだ。こんなにも悲しいことはあるのだろうか。


「ナマエ……、手ぇ離せッ…!」

「ジャン先輩、大好きです…」


薄い唇に重ねたのに、味はとてもしょっぱかった。頬に伝うこの液体が原因なのだろう。
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