星屑は | ナノ



青峰side

「青峰くん、ここだよ」

「お、おう…」

 着いた場所は、俺ん家以上の家だった。沙藤をゆっくり下ろし、その家のすごさをじっと見ていた。

「今日は色々ありがとう」

「別に大したことはしてねえよ」

「そんなことないよ。ねぇ、ちょっとだけ屈んでくれない?」

 外灯が逆光となり、沙藤の表情が分からない。何を考えているのか分からなかったが、言われた通りに膝に手をついて前に屈む。

「ありがとう」

 沙藤の顔が近づいてきて、唇に柔らかい感触が当たった。
 ほんの数秒だったが、目を閉じている沙藤の顔を見て、睫毛が長えなくらいしか思わなかった。
 それくらい自然な流れで、俺は男からのキスを受け入れてしまった。

「あれ、青峰くん驚かないの?」

「なんか、お前だとおかしくない」

「何それ?」

「わかんねえ」

 理解できない。俺はくすくす笑う沙藤の後頭部を引き寄せて、自分から仕掛けた。
 沙藤の口ン中に、何か回答があるんじゃないかと思い込んで、舌先でぐちゃぐちゃと探す。
 苦しくなってきたのか、俺の胸を拳で軽く叩いてきた。何故か名残惜しく、ゆるゆる離した。

「っはあ、あ…青峰くん、がっつきすぎだよ……」

「多分、お前が好きだ」

「僕も…青峰くんが好きだけど。多分じゃなくて」

「軽いな」

「青峰くんに言われたくないよ」

 むすっと頬を膨らませる沙藤の頭を撫でて、俺は「また明日な」と言った。

「うん、バイバイ」

 俺は混乱していた。転校してきた時は落胆したのに、今はアイツがここに来てくれてよかったと思っている。

「ほんと…わけわかんねエな」


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