6青峰side
「青峰くん、ここだよ」
「お、おう…」
着いた場所は、俺ん家以上の家だった。沙藤をゆっくり下ろし、その家のすごさをじっと見ていた。
「今日は色々ありがとう」
「別に大したことはしてねえよ」
「そんなことないよ。ねぇ、ちょっとだけ屈んでくれない?」
外灯が逆光となり、沙藤の表情が分からない。何を考えているのか分からなかったが、言われた通りに膝に手をついて前に屈む。
「ありがとう」
沙藤の顔が近づいてきて、唇に柔らかい感触が当たった。
ほんの数秒だったが、目を閉じている沙藤の顔を見て、睫毛が長えなくらいしか思わなかった。
それくらい自然な流れで、俺は男からのキスを受け入れてしまった。
「あれ、青峰くん驚かないの?」
「なんか、お前だとおかしくない」
「何それ?」
「わかんねえ」
理解できない。俺はくすくす笑う沙藤の後頭部を引き寄せて、自分から仕掛けた。
沙藤の口ン中に、何か回答があるんじゃないかと思い込んで、舌先でぐちゃぐちゃと探す。
苦しくなってきたのか、俺の胸を拳で軽く叩いてきた。何故か名残惜しく、ゆるゆる離した。
「っはあ、あ…青峰くん、がっつきすぎだよ……」
「多分、お前が好きだ」
「僕も…青峰くんが好きだけど。多分じゃなくて」
「軽いな」
「青峰くんに言われたくないよ」
むすっと頬を膨らませる沙藤の頭を撫でて、俺は「また明日な」と言った。
「うん、バイバイ」
俺は混乱していた。転校してきた時は落胆したのに、今はアイツがここに来てくれてよかったと思っている。
「ほんと…わけわかんねエな」
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