星屑は | ナノ



 もう日が完全に沈んだ頃、やっと天野の靴が見つかった。青峰がゴミ箱で発見したのだ。
 ボロボロの靴を彼は大事そうに抱え、青峰と俺に向かって「ありがとう」と微笑んだ。
 俺達は途中まで一緒に帰ることになった。ボロボロの靴を履いた彼は、長身の俺と青峰に挟まれて、まるで子供みたいだった。

「そんなに大事なのかよ、それ」

「うん。僕の父さんが買ってくれたんだ」

「ふうん…意外と親思いなんだな」

「そうかな?」

 全然僕はダメな子だよ。彼はそう微笑む。どうして、彼は自分を卑下(ひげ)するのだろうか。
 俺はそう疑問を持ったが、青峰と楽しそうに話す空間を壊したくなかった。

「へえ、青峰くん達はバスケ部なんだー」

「お前は何かに入ってんの?」

「ううん、僕は門限が早いから部活しないんだ」

「おい、門限は何時なのだよ!」

「6時だよ。あ、もう過ぎちゃったね」

 時計の針は7時を指していた。とっくに門限を過ぎたというのに、天野は焦ることなくケラケラ笑っている。
 やはりコイツは変人だ。

「お前急がなくていいのかよ」

「大丈夫だよ。ちゃんと謝って事情を話せば。ね?」

「……乗れ」

「え?」

 突然、青峰がしゃがみこんで前屈みになり、天野に背中を向けた。どうやらおんぶするらしい。
 天野は青峰の背中に乗るのを躊躇っていた。

「あ、青峰くんに迷惑かけちゃうよ…!」

「あーもううぜえ!おら、行くぞ!」

「あ、青峰!?」

「じゃあな!緑間!」

 痺れを切らした青峰は、天野を横抱きにして走り去って行った。
 残された俺は、一つ溜め息を吐いて家路を急いだ。


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