5 もう日が完全に沈んだ頃、やっと天野の靴が見つかった。青峰がゴミ箱で発見したのだ。
ボロボロの靴を彼は大事そうに抱え、青峰と俺に向かって「ありがとう」と微笑んだ。
俺達は途中まで一緒に帰ることになった。ボロボロの靴を履いた彼は、長身の俺と青峰に挟まれて、まるで子供みたいだった。
「そんなに大事なのかよ、それ」
「うん。僕の父さんが買ってくれたんだ」
「ふうん…意外と親思いなんだな」
「そうかな?」
全然僕はダメな子だよ。彼はそう微笑む。どうして、彼は自分を卑下(ひげ)するのだろうか。
俺はそう疑問を持ったが、青峰と楽しそうに話す空間を壊したくなかった。
「へえ、青峰くん達はバスケ部なんだー」
「お前は何かに入ってんの?」
「ううん、僕は門限が早いから部活しないんだ」
「おい、門限は何時なのだよ!」
「6時だよ。あ、もう過ぎちゃったね」
時計の針は7時を指していた。とっくに門限を過ぎたというのに、天野は焦ることなくケラケラ笑っている。
やはりコイツは変人だ。
「お前急がなくていいのかよ」
「大丈夫だよ。ちゃんと謝って事情を話せば。ね?」「……乗れ」
「え?」
突然、青峰がしゃがみこんで前屈みになり、天野に背中を向けた。どうやらおんぶするらしい。
天野は青峰の背中に乗るのを躊躇っていた。
「あ、青峰くんに迷惑かけちゃうよ…!」
「あーもううぜえ!おら、行くぞ!」
「あ、青峰!?」
「じゃあな!緑間!」
痺れを切らした青峰は、天野を横抱きにして走り去って行った。
残された俺は、一つ溜め息を吐いて家路を急いだ。
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