星屑は | ナノ



 天野沙藤という人物を避け始めたのは、ちょうどこの時期だった。
 彼がいじめられるのも、ちょうどこの時期からだった。


 彼がこちらに転校してきて、1週間くらい経った部活帰りのことだった。
 偶然、青峰と一緒に下駄箱に向かっていた。そこに、帰宅部である天野がロッカーを開けていたのだ。

「何してんだよ」

 青峰が怪訝そうに尋ねた。当たり前だ。他人のロッカーを開けているのだから。

「探しているんだ」

「探し物か?」

「うん。僕の靴が無いんだ」

 青峰が困惑した瞳をこちらに向けた。俺は小さく嘆息した。どうしてこう面倒なものに捕まってしまうのだろうか。おは朝占いの力も借りているというのに。
 すると、青峰がふいにごそごそと自分のロッカーをあさり始めた。

「えーっと、誰だっけ」

「天野沙藤」

「あー沙藤、これやるよ。ちょっときたねえけど」

「なっ、青峰…!?」

 なんと、青峰が自分の靴を渡したのだ。言動は粗野だが、根は良い彼のことだから天野に靴を差し出したのだろう。

「ありがとう。でも、大丈夫だよ。それにサイズが大きいし」

「あーそうだな。つーか大丈夫って、靴が無きゃ帰れねえだろ」

「もし見つからなかったら、シューズもあるし」

 ね?と天野が微笑むと、青峰は呻き声を上げながら自分の頭を掻いた。嫌な予感がする。

「おい緑間」

「……探すのか」

「え?でも…」

「俺がいいつってんだからいいんだよ。どういう靴だ?」

 俺は彼らに気づかれぬよう小さく嘆息した。


栞を挟む
戻る


- ナノ -