星屑は | ナノ



 俺は学級委員長という肩書きだけで、昼休み、天野に学校を案内する役目を負わされてしまった。担任からの頼み事なので仕方なく引き受けた。

「今ここにいる棟は教室棟なのだよ。下から3年、2年、1年という順になっている」

「…………」

「……次に行くぞ」

 無言のまま次の棟へ渡る。
 そういえば、この男が喋っているところをあまり見たことがない。
 いつも静かに薄く顔に笑みを貼り付けているだけだ。質問に対しては、軽く頷いたり、首を横に振っていたりしていた。

「ここは管理棟。職員室や事務室があるのだよ」

「…………」

「……どこか行きたいところはあるか」

「……屋上」

「屋上?」

「屋上、連れてって」

 にこりと笑う天野に、何故か俺は否応なしに頷いてしまった。



 屋上に繋がる扉を開けると、雨がタライをひっくり返したように降っていた。
 引き返そうとしたが、天野がふらふら外に出ようとしたところを目撃し、慌てて腕を掴んだ。

「なに、やってるのだよ!」

「そっちこそ。どうしたの」

「こんな土砂降りの中で外に出る馬鹿がいるか!!」

「ここにいるよ」

 自身を指す天野に俺はため息を吐いた。面倒なものに引っかかってしまった。
 確かに今日は頼まれ事を引き受けてはいけないと、おは朝が言っていたではないか。
 迂闊(うかつ)な自分に舌打ちした。


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