追求せよトゥルー
怜は眉間に皺を寄せることを止めて、代わりに口を開いた。小さな声で、あります、と答えた。
「僕も…辛くなったことはあります。だから……その、渚君の手を…取った」
「……ああ、だから水泳部に」
「辛くなったら…そういう逃げるような選択も、ありだと思います」
そう言いきった怜の目には何の迷いがなかった。綺麗にきらきらと澄んでいて、まるで僕の奥深くに棲むモノを探しているようで。
怖い。
「はは、そんなに見ても怜が欲しいこたえは出せないよ」
「っ、ああすみません。そろそろ行きましょうか」
「ねえ、怜」
「なんですか皐月君」
「……疲れた」
ものすごくウザそうな顔をされた。こんなに露骨な嫌悪を示されたのは初めてだから、思わず吹き出してしまった。
「ふふ、怜と話してよかった。なんか軽くなった」
「……間違ってもいいんですよ」
だって、僕らはまだ道の途中だから
ちょうど店のBGMが被せてきた。怜と顔を見合わせて、くすくす笑った。
よかった、本当に。凛も同じように乗り越えているなら、いいんだけど。
僕がそう思っている同時刻に、凛が遙に詰め寄っていた。フェンスまで追い込んだ凛は、遙の突然の返事に反応が遅れた。
「皐月とは何があったんだ」
「っ……はあ?お前には関係ねえだろ」
「関係…ある。この前、変な顔で告白された」
「…………は…?」
遙の言葉に動揺した凛は、間が抜けた声を漏らした。遙は確信を持ち、更に続けた。
「…はっきりさせろ、凛」
「……意味、わかんねえし」
二人の間には、奇妙な空気が流れた。
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