さよならロンリー

はぐれてしまったようだ。気づいたら誰もいなくて、水着コーナーにいたはずなのにゴーグルコーナーにいた。あれれ。

このスポーツ用品店は中々広いところで、一度はぐれたら電話かメールする限り会えないとタチの悪い噂をされる店だ。

だって、今、何故か怜だけと会えたし。


「皐月君……君は一体どこをどう歩けば、ここにたどり着くんですか」

「ふつうに」

「……まあいいでしょう。少し、聞きたいこともありますから」

「聞きたいことって?」


僕の返事に怜は「ちょっと待ってください」と携帯電話を取り出した。蝶々のシールを貼ったら綺麗になりそうだな。


「はい、皐月君を発見しました。え…?今度は遙先輩ですか!?全く…。わかりました。僕も探すので……はい、では」

「……なんか怜ってSPみたい」

「僕が聞きたいことは、泳がない理由です」

「……ええー言わなきゃ駄目なの」

「駄目です。何故なら僕も君も、岩鳶水泳部の一員なのですから。…あの記事を見て、不思議に思ったんですよ」


怜と僕の間に沈黙が降りる。先に破ったのは、僕だった。


「はは、バレちゃったか」

「……笑ってないで答えてください」

「んー…そうだなあ、端的に言えば嫌になったから。水泳がね」

「どうしてですか!あの記事に写っていた皐月君は…まるで遙先輩と同じように、自由に泳いで、」
「怜は、いき苦しくなったことない?」


僕に質問を遮られて気に触ったのか、睨んでくる怜を見て苦笑した。

それでも僕はまだ言葉を続ける。何となくだけど、怜になら言えそうだから。


「怜は陸上で、いき苦しくない?」

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