選ばれたのはブリーフ
僕は今、どっかのスポーツ用品店にいる。目の前に広がるのは水着ばかり。……ぜんぶ真っ黒だ。
「ほらほら皐月ちゃんも選んでよ〜」
「……ブリーフでいいじゃん」
「だから海乃君、あのブリーフでは駄目なんです!水の抵抗を無くすためには、裾が長くなければ……!」
「あ、渚これ似合いそう」
「わー可愛い!って女の子用だよ!!!」
僕が渚に可愛らしいフリルの水着を勧めていたら、竜ヶ崎が「ちょっと聞いてますか海乃君!」と怒ってきた。可愛い。
「名前」
「は…?」
「怜、って呼んでいい?」
「……今更でしょう、そんなこと」
「怜ちゃんのれはレモンのれー!」
「違うだろ。怜のれは霊魂のれ」
「やめてください皐月君!怖すぎます!」
今度は顔が赤から青くなった。そう指摘したら、また怜の顔が赤く染まった。ほんと面白すぎ。
「怜、水着決まった?」
「決まるわけないじゃないですか……この二人のせいで」
「へー怜は江ちゃんと渚のせいにするんだ?へえええ」
「ちっ、違います!ていうか言わなくてもわかりますよね!?」
「うん」
「まさかの即答!?」
表情をくるくる変える怜は、見ていて楽しくてしょうがない。
あの遙でさえ、笑うことを我慢して背中を向けている。
「怜は芸人になれば?絶対一発屋になれるよ」
「それってたった一度きりじゃないですか…?」
眉間に皺を寄せて唇を尖らせる顔を見て、大人びた同級生だと思っていたけど、僕と変わらない雰囲気で少しだけ強張りが解けた。
「やっぱり怜は面白いよ」
「ねーきっと怜ちゃんはいいコメディアンになれるっ!」
「なりたくないです!!」
あ、今度は真琴先輩も笑ってる。
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