賑やかなリターン
帰り道、駅に向かう二人を見送るために五人でぞろぞろと歩く。
「怜、なかなか浮かないな…」
「大丈夫だよ怜ちゃん!僕がぜーったい、浮かせてみせるから」
「……ありがとうございます」
浮かない顔の竜ヶ崎は、周りの期待へそぐわない結果に満足がいかないのだろう。慰めの言葉ぐらいかけてあげなきゃね。
「そう気落ちしなくても大丈夫だよ。まだ初日だし、ね」
「海乃君……君に人の血が通っていたのですか」
「……んー?竜ヶ崎君はプールの底に沈みたいのかーそっかー」
「ひいいい!そんな黒い笑顔で迫らないでください!渚君助けて……!」
竜ヶ崎の腕を握りしめて顔を近づけていったら、渚が僕の背中に抱きついてきた。やっぱり軽いな。
「こらー皐月ちゃんダメだよ!この浮気者め!」
「え、浮気者…!?」
「え…?意味わかんないんだけど……」
「皐月は鈍いからもっと直接的に言わなきゃダメだ」
遙に言われたくないよ!でも何故か渚は「だよねー」と同意して、真琴先輩まで首を縦に振っている。
竜ヶ崎はいつもの癖で眼鏡を押し上げて、ぼそりと呟いた。
「海乃君は天然タラシ…」
「それ言いふらしたら竜ヶ崎のこと、これからカナヅチって呼ぼ、」
「呼ばないでください!」
まったく、素直になればいいのにね。にっこり笑って「嘘だけど」と言ったら、竜ヶ崎は顔を伏せて何か呪文を唱え始めた。
「皐月ちゃんのタラシ!その笑顔だめって言ったじゃん!ばかばか!」
「な、渚まで言わないでよ!!」
「…ハル、ちょっと同意したでしょ」
「どうして分かった」
「俺もそう思ったからね」
← /
→