積み重ねるエンデバー
正式に水泳部へ入部した竜ヶ崎の特訓が始まった。ついでに僕もその特訓とやらに、付き合わされる羽目になった。
……帰りたい。ちらりと江ちゃんを見たら、後ろに般若が浮かんでいた。
竜ヶ崎はどうして泳げないのだろうか。やっぱり陸上でつけてきた筋肉が、枷になっているのかな。
「皐月ちゃんは何してるの?」
「僕は竜ヶ崎の泳げない原因を探してるの。やっぱり筋肉かな…?」
「皐月君はもう少し筋肉をつけなきゃダメだよね」
「江ちゃん、それは今関係ないよ。はあ…僕も泳ぎたい」
太陽の光に照らされてきらきらと乱反射する水面を見て、思わずジャージに手をかけたくなる。
真琴先輩に「一応病み上がりだから」とストップされているのだ。部長命令、だとか。
「ドンマイ皐月ちゃん!僕が代わりに泳いであげるね」
「……竜ヶ崎の泳ぎの練習は?」
「あー……えへへ」
「渚君……責任取ってくれるんですよね…?」
「わ、わかってるよ〜!ちょっと皐月ちゃんをからかっただけだってば」
「え、なに、責任って何!?」
竜ヶ崎が深刻な顔をして言った「責任」という言葉の響きが重かった。
渚はけろりとした顔で「それはもちろん、水泳部に勧誘したことに決まってるよ」と星が付きそうな勢いで言い切った。マジか。
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