水色の僕と母神像

今日も学校へ行く。何も変わらない景色、薄っぺらい会話、味のない食事。
すべて灰色の日常だった。寂しくて辛くて、永遠とも思えるような日々。
でも凛と会っている時は、ここがつまらない場所だと意識しなかった。
学校の上辺だけの関係で僕は漂っていて。ふわふわ、ふわふわ、と。
凛も……同じなのかな。

スイミングクラブを辞めることが、現実になったらしい。メンバー表から凛の名前が消えた。リン・マツオカ……女の子みたいな、名前。
全部なかったことにしたい。それこそ水で流すように、僕は必死に泳いだ。インターバルなんて挟まずに、泳ぎを止めたら死んでしまうマグロみたいに泳いだ。


「皐月!お前どうしたんだ。悩みがあるなら言ってみろ」


金髪碧眼のコーチが久しぶりに喋りかけてきた。悩みなんて、たくさんあって言い切れない。
俯いた僕を見てコーチは溜め息を吐いた。そして肩を軽く叩いて「いい加減にしろよ、ジェリーフィッシュ」と慰めてきた。
……うわ、目頭が熱い。


「凛の住所?」

「はい。先生、言ってましたよね。何か伝言を言ってきたって」

「そうね。えーと、今から探すわ。ちと待ちなさいな」

「はーい」


近くにあったベンチに座る。凛、元気かな。なんて話そうか。最近のこと?何もない。凛がいないから……なんもないよ、僕。
十数分後、山田先生は一枚のメモ用紙を渡してきた。うわ、ムカつくくらい綺麗な字がある。


「先生、意外と綺麗なんですね」

「それアイツにも言われた」

「アイツ?」

「あんたのコーチよ。ったく、素行がガサツだと字までガサツになるわけないじゃない」

「……ぶはっ!あははは!」

「な、なによ!」


耳を赤くしてぎろりと睨み付けてくるけど、全然こわくない。
先生、意外と純情なんですね。応援しますよ、とガッツポーズを取れば、ボールペンを投てきするポーズになったので急いで外に出た。


「純情、か……」


早く人一倍純情なアイツに会いたい。


久しぶりに見た凛の顔は、ちょっと陰があったけど僕の知る彼だった。嬉しくてつい「よかった……!」と抱きついてしまった。
困惑する凛は涙目の僕を家に招き入れてくれた。内装は綺麗で、僕の家と変わらない。

居間に通されてクリーム色のソファに座る。ガラス張りのテーブルに、僕が好きなサイダーが置かれた。抜かりないなあ。
対面するように凛が向こう側のソファに座った。深刻そうな面持ちで、ゆっくりと口を開いた。

 / 




「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -