惹かれるライト

「泳げないなら先に言ってくれればよかったのに」


竜ヶ崎が泳げないと言っても、葉月は「ノープロブレム!僕達と泳げるようになればいいんだよ!」と反論して、無理矢理連れて行きそうだ。

僕は小さく嘆息していると、遙が飛び込み台に上がった。あ、遙の番だ。


「竜ヶ崎は…多分、泳ぎたくなるよ」

「は…?何言ってるんですか」

「遙先輩を、見ればね」


理解できないと言いたげな視線を無視して、水面に飛び込んだ遙を見る。…みずを、かんじる。

アイは覚えているのかな、遙と僕との会話を。水が照明に反射してきらきら光る天井や水で湿ったタイル、鼻腔をくすぐる塩素の匂いを。

覚えていない、かな。


「ね、すごいでしょハルちゃん」

「どうして葉月君が得意気なんですか…」

「僕も皐月ちゃんもマコちゃんも、みーんなハルちゃんの泳ぎに惹かれたんだよ」

「…海乃君、が?」

「……そうかもね」


曖昧に笑う僕に葉月は頬をふくらませて、「ほんとはそうなんでしょー!」とグイグイ抱きついてきた。パーカー濡れるよ。


「こら渚、パーカーが濡れるぞ」

「ちぇー。…ふふ皐月ちゃんは泳げるってわかったし、怜ちゃんも入れてがんばろ!」

「なっ、僕はまだ入ると言ってません!!」

「竜ヶ崎は遙先輩に惹かれたんだろ?入るべきだよ」

「海乃君まで何を言ってるんですか……っ!」

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