飛び込んだバタフライ
岩鳶側に戻ったら、葉月に両腕を掴まれた。え、なに怖いんだけど。
「皐月ちゃんって、スッゴく怖い!」
「…………ん?どういう意味かな…?」
「だから、すっごく怖いの!クラゲみたいにふわふわ〜ってしてたくせに、いきなり襲いかかってくる感じで!」
クラゲ、か。熱弁する渚の後ろで竜ヶ崎が呼ばれた。何かを求めているような彼のすがり付く視線に、「緊張するなよ」と元気づけておいた。
すると竜ヶ崎はムッとした表情で違いますと言ってきた。なんだ、顔色が悪いと思ったけど、意外に大丈夫みたいだ。
「怜ちゃん、タイムトライアルだから焦んなくていいからね!」
「わ、かってます……!」
…いや、やっぱり大丈夫じゃないみたいだ。なんか心なしか震えてるし、竜ヶ崎の足。
飛び込み台に上がり、綺麗な姿勢でスタートを待つ。うん、ちゃんとしてる。
そしてホイッスルが鳴ると同時に飛び込んだ竜ヶ崎は、沈んだ。
「あれ…怜ちゃん浮かんでこないね」
「れ、怜!?」
「まさかの金槌か…」
竜ヶ崎の金槌が発覚して周りにいた葉月や真琴先輩、さらに江ちゃんも慌てていた。唯一テンパって無かった遙は、真っ直ぐ水に入って竜ヶ崎の救助に向かった。
それに続いて、葉月も着ていたパーカーを僕に預けて飛び込んだ。…あ、凛が上にいる。目線が合ったけど、こちらからふいと反らして竜ヶ崎を見た。
「よかった。葉月、大丈夫?」
「大丈夫、かな…?」
とりあえず引きずり出した竜ヶ崎は、ひどく落ち込んで体育座りした。
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