昔懐かしいメモリー
「付き添い?」
「そう。私、お兄ちゃんに会いに行くんだけど、一緒にどうかなって」
「……行く」
僕が江ちゃんの付き添いに合意したら、とても驚かれた。どうやら僕は凛に会いたくない(もしくは面倒くさがり)だと思われているようだ。
凛に会うのはいいけど、アイツとはあまり会いたくないから。……水泳、まだ続けてるのか分からないけど。
「皐月君?」
「っ!あ、ああごめん、ぼんやりしてた。それでいつ行くの?」
「それは……今日でしょ!」
「…………ああ、なるほど」
「も、もうちょっと反応してよー!」
珍しく流行りのネタをする江ちゃんに対しての反応が遅れた。兄妹そろって分かりやすいな。
「よし、行こっか」
「了解」
「そういえば……ずっと気になっていたんだけど、どうして水泳しないの?あっ、答えたくなければいいんだけど…」
「前にさ、凛を追い越してしまうのが怖かったって言ったよね」
実は、その前に同じようなことがあった。僕がまだ日本にいて、小5の時に幼なじみと大喧嘩をした。
原因はその幼なじみが僕を悪く言っているっていう噂だったけど、強ち間違いじゃなかった。
「間違いじゃなかった…?」
「うん。本当は怖かったんだけど、聞いておきたかった。僕のこと、どう思っているか」
幼なじみなんだから、僕を親友だと思ってるって甘い考えだった。
しかし、予想外の答えが出てきた。相手は僕の才能を妬んでいて、好きじゃなかった、と。
当時の僕はナイーブだった。深くその言葉に勝手に傷ついて、母親が勝手にオーストラリアへ水泳留学を決めていたから、それに便乗してあっちに行った。
……逃げたんだ、僕はアイツから。
「そっか、そこでお兄ちゃんと会ったんだ」
「うん。馴れ馴れしい奴だと思ってた」
「でも仲良くなったんだよね」
「……1年だけ、ね」
「1年…?」
「そう。あ、ここじゃない?鮫柄学園」
僕の他愛ない昔話を話していると、やっと鮫柄前に着いた。……疲れた。
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