ゆるりとステイ
「うわー皐月ちゃん家、おっきくない!?」
「そう?遙先輩の家と変わらないよ」
「えー絶対おっきいよー」
「はいはい分かったから、早く入ろ」
押し問答になるところを止めて、鍵を解錠して葉月を招き入れた。うん、やっぱり今日はいない。よかった。
「皐月ちゃんって兄弟とかいるの?」
「んーたぶんいない」
「たぶん?」
「たぶん。葉月は?」
「僕はお姉ちゃんがいるよ」
二人で廊下を進んでいき、二階へつながる階段を上って僕の部屋に入る。ここら辺は平屋が多いけど、僕の家は二階建てだ。
「皐月ちゃん家ってやっぱり広いよー!」
「二人しか住んでないからだよ」
「二人?」
「うん。僕と母さんだけ。父さんは単身赴任らしいけど」
「へええー。そっかぁ、ひとりだと寂しいよね」
葉月に真琴先輩との会話を聞かれていたのかと思ったが、「こんな広いお家だとさ」と言ったので違うようだ。
「葉月、ご飯と風呂どっちにする?」
「ご飯!って言いたいけど…まだ着いたばっかりだよね」
「いいよ。ご飯は炊いてあるから、おかず作るのにちょっと時間かかるけど」
それを聞いた葉月は、目を大きく見開いた。そんなに時間がかかるのが嫌なのか。
「えっ!皐月ちゃん料理できるの!?」
「……できたら悪いか」
「意外な一面だね!ハルちゃんみた、あ…ごめん」
「なんで謝るんだよ」
「だって……皐月ちゃん、ハルちゃんと同じにされたくないっぽいし…。僕はハルちゃんに憧れっていうか、尊敬してるからつい出ちゃって」
どんよりとした空気が部屋に漂う。どうすんだよこれ。僕はため息を吐いて、葉月の頭をこつんと叩いた。
「いたっ!なにす、」
「いいか葉月、一度しか僕は言わないからな。僕も遙先輩に憧れている。それと同じくらい羨ましいんだよ……みんなに愛されているあの人が」
「……あはは!皐月ちゃんおっかしい〜」
葉月に笑われて少し顔が熱くなる。人にからかわれることが苦手なのは、今も同じようだ。
「皐月ちゃんも、ハルちゃんと同じくらい愛されていると思うよ?」
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