ぼくらのコールドウォー
「今日の合同練習、よろしく」
「よろしくお願いします」
「あれ、海乃君は泳がないのか?」
「一応マネージャーなので」
この前の赤髪のひと――御子柴さんは「勿体無い」と残念そうな顔をした。何がもったいないんですか。
ちらりと鮫柄の方を見たら、昔とあまり変わらない幼なじみ――アイこと似鳥愛一郎が、いた。
あっちも気づいたようで、大きな目を更に見開いていた。罪悪感が一気に押し寄せてきて、目を反らしてしまった。
まだ水着に着替えていない竜ヶ崎を目敏く指摘した御子柴さんは、アイに更衣室へ案内しろと指示した。
「更衣室はこっちです。……“海乃”君も、来てください」
「……海乃君?」
「っ!ああ、わかった」
竜ヶ崎がカーテンの向こう側で着替えている間、意外にもアイが話しかけてきた。
「久しぶり、海乃」
「…久しぶり、“似鳥”」
「……海乃にも水着貸してあげようか?」
「いらない。……お前、泳ぐのか」
凛と遙の間に流れるような熱気ではなく、突き刺すような冷気が僕と似鳥の間に流れる。
しっかしまあでかくなったな、こいつも。どいつもこいつも僕を追い越していく。でも、アイはまだ僕より小さい。
「タイム、競争しようよ」
「…いいけど。似鳥、負けても泣くなよ」
「ふふ。それはこっちの台詞だよ、海乃」
仕方ない、着ていたジャージを脱ぎ捨てる。するとアイが瞠目していた。ああ、これは遙から学んだことだ。……下に水着を履いておいて正解だったな。
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