苛立つスペア
最近、葉月はせかせかと働いている。さらに授業中はよく寝てる。理由を聞いてみたらプールを補修しているらしい。
プール、この学校にあったことを忘れていた。屋外のプールなんて懐かしい、小学生以来だ。
「皐月ちゃんもマネージャーなんだから手伝うよね?そのためにジャージを持ってきたんでしょ〜?」
「いや、体育が」
「うえ〜〜ん手伝ってくれないんだぁぁああ」
「…………分かったから頭で背中をぐりぐりするのはやめろ」
「わーい!皐月ちゃん融通が利くぅ!」
「……はあ」
案外、葉月にこの押しの強さでやらされているようで、ちょっとムカつく。やられっぱなしは好きじゃない。
「ほらほら皐月ちゃん!プールへレッツゴー!」
「わかったから押すな」
プールに着くと、真琴先輩がフェンスにペンキを塗っていた。僕を見て瞠目した。あれ、何か変なのが付いてる?
「皐月!もしかして、渚が無理矢理連れてきた…?」
「違います。僕もマネージャーだし、手伝わなきゃいけなかったのに……すみません」
「いいよ、気にしてない。ハルのところ手伝ってあげて?」
「わかりました」
遙のところに行くと、プールの壁を補修していた。葉月はもうローラーを持って、塗り始めている。
葉月ってほんと行動力があって早いよな…。そう思いながら進んでいくと、遙が振り返った。
「久しぶりですね、遙先輩」
「遙でいい」
「わかりましたハルちゃん先輩」
「余計なものを付けるな」
「ふふ、なんか二人とも兄弟みたいだね〜!」
遙の方を向くとちょうど彼も僕を見てきた。……なんでこうもタイミングがいいんだろう。
凛の言葉を思い出してしまい、渡されたローラーを握る手に力が入った。ああ、くそ。
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