夕焼けノスタルジー
「天才小学生ってどういうことかな〜皐月君?」
「ははは、江ちゃんちょっと近いよ!お兄さんが見たら気絶しちゃうって」
「お兄ちゃんは関係ないでしょ!質問に答えてほしいの。あとゴウじゃなくてコウ!」
帰りの電車にて、江ちゃんに軽く尋問されてます。言わなきゃ、いけないのかな。というか、僕はやたらと江ちゃんに過去を明かしている気がする、うん。
考える僕に勘違いをしたのか江ちゃんは謝ってきた。どうしたんだろ、そんなに怖い顔してた?
「もしかしたら、お兄ちゃんが変わった理由があるかもしれないって思ったら、焦っちゃって……」
「凛は…関係ないよ。ただ、僕が他のひとより成長が早かっただけ」
「そうなの…?」
「だって昔は凛よりおっきかったんだよ?それが今じゃ見下げられてムカつく」
「あはは、皐月君は七瀬先輩と同じくらいだもんね」
シリアスな空気から和やかな空気に一転した。よかった。江ちゃんは、凛と兄妹だからちょっと雰囲気が似てるんだよな。
だから、つい口を滑らせてしまうことがあるんだけど。
「この話は、また今度必ず話すから」
「……じゃあ、指切りげんまん」
『約束だからね!ゆーびきりげんまん、嘘ついたら針千本……や、やっぱり違うのにしよ!』
小学生のとき、よく約束をする度にアイツと小指を絡ませて、いまいち罰なのか分からないものを言っていた。
あの日だって約束をして――
「皐月君?」
「っ、ごめん…。指切りげんまんって懐かしいね」
「ふふ、私はよくお兄ちゃんとしたなあ。針千本飲ーますって言ったら、涙目になっちゃって」
懐かしいな…と江ちゃんがぼんやり僕じゃない景色を見ていた。僕はそれを見たくなくて、何の変哲もない床をじっと凝視した。
← /
→