跳ね上がるスプレー

水泳部が去った鮫柄の屋内プールに忍び込む僕達四人。七瀬先輩は入って数歩くらい進んだところで、真っ先に脱いで飛び込んだ。

ちなみに、昨夜のスイミングクラブに入ったことを葉月と真琴先輩は怒られたらしい。どんまい。


「やっぱりハルちゃん…イルカみたい」

「元気になるよね、水の中に入ったらさ」

「ねえ、皐月ちゃん、マコちゃん。僕達も泳ごうよ!」

「ダメ!見つかるとマズイって。それより凛を捜さないと…」

「その前にちょっとだけ」

「葉月、お前水着は……」

「裸でいいんじゃない?」


唖然。ポカンとする僕達を尻目に、葉月は制服と下着を全て脱ぎ捨て、「アイキャンスーイムッ!」と飛び込んだ。

どうするんだよ、これ……。呆れていたら葉月がこっちに来いと呼んだ。真琴先輩が何故か僕の手を掴んだ。暗いのがちょっと怖いらしい。……可愛い。

何かと思い近づいたら、真琴先輩が足を引っ張られた。その道連れで、僕も一緒に引きずりこまれた。……今日で二回目だ。


「あははは!象が落ちたみたい!」

「な〜ぎ〜さ〜!」

「……またびしょ濡れだ」

「ほら、皐月ちゃんも!」


ばしゃばしゃ水を掛け合う葉月と真琴先輩。微笑ましい光景だな。そんな温かな空気を、扉が開く無機質な音によって消し去られた。


「お前ら…どういうつもりだ」

「凛!」

「僕達、凛ちゃんに会いに、」
「帰れ」

「………………」


楽しい水遊びの時間もこれまでか。ため息を吐いていると、横に七瀬先輩が泳いできた。

そして、顔を上げて「フリー…」と呟いた。怪訝そうに眉をしかめる凛に、言葉を続ける。


「言っただろ…俺は、フリーしか泳がないって」

「……は?」

「あの時の景色…もう一度見せてくれ。何が見えたか、忘れちまったから」

「……ああ、見せてやるよ。ただし、あの時と同じ景色じゃねえ。もっと違う景色だ…!」


……どんな景色かすごく気になる。

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