手に入れるためのメソッド

七瀬先輩は落ち着きながら答えた。別にここでフラれても構わない。僕は、あの人を手に入れたいためだから。


「俺は…まだお前のことを知らないから分からない。それに、お前は凛が好きなんだろ」

「……そんな。僕は、七瀬先輩が好きだって言ってるじゃないですか」


誤魔化すために笑うと、七瀬先輩はじっと見てきた。ちょっと、恥ずかしいんですけど。


「あと」

「あと?」

「七瀬先輩とか橘先輩とか、呼ばなくていい。遙と真琴でいいから」


まさか七瀬先輩から名前呼びの許可が下りるなんて。今度は僕が瞠目する番だった。


「はる、か?」

「……なんだ」

「可愛い名前ですよね、遙って」

「お前に言われたくない」


ムッとした表情の七瀬先輩も面白い。なんとなくだけど、凛が先輩に執着する理由が分かる。



「お邪魔します」

「…………」

「えっ、もう脱ぐんですか!?」

「悪いか」

「じゃあ、僕も一緒に入ります」

「………………」


なんですか、その嫌そうな顔は。仕方なくブレザーを脱ぎ、ワイシャツで一緒に風呂場に来た。

七瀬先輩は気持ち良さそうに目を瞑りながら、生ぬるい水の感触を味わっている。ほんと、イルカみたいだ。


「気持ちよさそう…」

「……なら、お前も入れ」

「えっ、僕はちょっと、うわああ!?」


派手に水飛沫が舞うのを視界の端に捉えた。ワイシャツを着た人間を風呂に引きずりこむなんて、さすが七瀬先輩だ。


「あー…もう、びしょ濡れじゃん」

「脱げば」

「言われなくても脱ぎます!」

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