ファーストインプレッションは陸上で
最初の自己紹介の時、名前が女みたいだからさん付けで呼ばれた。ムカつきながらもはいと返事をした。
僕の他にもさん付けされている人がいた。葉月渚。その彼は、僕に話しかけてきた。
「皐月ちゃんっていうんだー!僕と同じだね!」
「うん」
「女の子みたいな名前同士、仲良くしよ!」
笑った顔が眩しくて、目を伏せながら「よろしく」と返した。そんな僕に葉月は「よろしく!」と言った。
「そういえばさー皐月ちゃんって水泳やってる?」
「最近は……あんまり」
「そっかぁ。あ、タイムは?」
『タイム、いくつ?』
赤紫色の彼と葉月が重なる。笑うとぎざぎざした歯が覗いて、すぐに動揺して、一緒に居て心地よい人。
「皐月ちゃん?おーい」
「っあ、ごめん……。タイムは、わからない。種目も特にない」
「えっ、ないの?フリーとかじゃなくて?」
「僕は……競泳したことないから」
「えーもったいないよ!皐月ちゃんに教えたいなあ、リレーの楽しさ!」
キラキラした瞳で語る葉月は「一緒に水泳部に入ろう!」と手を握ってぶんぶん振った。元気だな…。
早く帰って泳ぎたい。そう思いながら、葉月の昔話を聞き流していた。
「でねーそのハルちゃんに……あ!皐月ちゃんにハルちゃん達を紹介してあげなきゃ!」
「ハルちゃん…?」
「うん、すっごい泳ぎが綺麗なんだよー!」
「女の子…?」
葉月はニヤリと笑って「どうかなあ?」と言った。なんなんだ…。
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