うっかりエンカウンター

「まあ、こういうのって気持ちの問題だし、塩でも砂糖でもどっちでもいいよね」

「……ベタすぎ」

「ボケとしては古典的すぎるよね」


あははと笑う橘先輩は、さっきよりも顔色が悪い。……この空き缶を蹴ったらどうなるかな。


「ひい!?な、何!?」

「あ、すみません、空き缶蹴っちゃいました」

「…皐月ちゃん全然悪いと思ってないよね!?」

「そんな、僕は今とても申し訳ないと思っている」

「棒読みで言われても誠意が伝わらないよ!!」


ごめんなさい、橘先輩。今とても楽しいです。


「懐かし〜」

「中は思ったより荒れてないね」

「ここは……」

「休憩室!」


葉月が壁にかかっている写真に駆け寄った。見ると、幼い顔の四人が写っていた。この時も七瀬先輩は仏頂面だ。流石だな。

写真に見入っている先輩がなかなか動かず、橘先輩がちょっと泣きそうになりながら名前を呼んだ。


「ハル、行くよ!」

「っ! あ、ああ」

「目印残ってるかな〜」

「目印?」

「んとね、目印っていうのは……」


立ち止まる先輩二人に、何事かと思って少し道を戻る。二人が見つめる先に、キャップをかぶってパーカーを着た男が歩いてきた。

見たことがあるような、髪の色。


「よう」

「だ、誰?」

「分かんないよ……!」

「まさか、ここでお前らと会っちまうとはな」


男は手を後ろにやり、キャップの紐をぱちんと鳴らした。その仕草を見て思い出した。同時に逃げたい衝動に駆られた。

……なんで、日本に凛がいるんだよ。

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