息を潜めるサーライト
「でも、行けばプールがあるよ?」
その一言で、不法侵入が決まった。場所は三人の思い出の場所であるスイミングクラブ……らしい。
そして、何故か僕たちは七瀬先輩の家にお邪魔していた。腹ごしらえのつもりか、先輩は鯖を焼いていた。……鯖は好きじゃない。
鯖を見て橘先輩が「また鯖!?」と突っ込んでいたところを見ると、恐らくだけど、相当な鯖好きなようだ。僕とは反対じゃないか、凛。
鯖を焼く七瀬先輩をぼんやり見ながら、後ろで三人の会話を聞いていた時に、引っかかるものがあった。
『俺達だけで掘っていいのかなってこと』
『それは、仕方ないよ。だって、凛ちゃんは日本にいないんだし』
何かを掘り出すために私服に着替えて、橘先輩はシャベルを持ってきていた。僕と七瀬先輩は手ぶら。
葉月は……リュックサックに何を入れているんだか。
「結構……荒れてるね」
「はい、これ一応…お清めの塩」
そう言って葉月がズボンのポケットから取り出したのは、ティッシュに包まれた白い塩。
「実はここ……出るらしいんだ」
「脅かすなよ……!」
「このあいだも、影が動くのを見たとか、すすり泣く声が聞こえたとか…!」
「……アホらし」
「皐月ちゃん!馬鹿にしたら幽霊が寄ってくるよ!はい、じっとしてて」
ぱっぱっと葉月曰くお清めの塩とやらを橘先輩、七瀬先輩に振りかけていく。そして、僕にも塩……じゃなくて、これ砂糖じゃん。
七瀬先輩は気づいたみたいで、肩にかかった砂糖を摘まんで舐めた。
「おい……これ、塩じゃなくて、砂糖だ」
「「……!」」
この時の二人の顔を写真に撮りたかった。
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