遅めのスタートダッシュ
「ハルちゃーん!マコちゃーん!」
「マコちゃん…?」
「ハルちゃん…?」
「「…渚!?」」
ハルちゃん、マコちゃん、そう呼ばれた二人は紛れもなく男だ。なるほど、だから葉月は僕に話しかけてきたのか。
納得していたところ、二人の視線が僕に向かった。う、気まずい。
「海乃君だよ!彼も共通点があるんだ…!」
「海乃君にも…?」
「それはね……名前が女の子みたいなんだよ!」
「それだけのためにもったいぶるな!!」
「あははマコちゃん怖いよー」
ハルちゃんの方はじっとこちらを見つめてきて……なんとなくぺこりと頭を下げる。あっちも下げてきた。面白い。
「それだけじゃないもん!皐月ちゃんは、水泳やってたって!」
「へぇ、そうなんだ。俺は橘真琴。よろしくね」
「よろしく、お願いします」
「あはは、マコちゃんだからそんなに硬くならなくても大丈夫だよ!」
「それはちょっとひどくない!?」
「…七瀬遙だ。よろしく」
「七瀬、遙…?」
聞いたことがある名前。反応した僕に、七瀬先輩は怪訝な表情になった。
「え?知り合いだったの?」
「いや…違うよ。あの、松岡凛を知っていますか」
「……知ってる」
「ええ!?リンちゃん知ってるの!?」
松岡凛、その名前を出した瞬間、七瀬先輩の顔が曇った。本当は…出したくなかったんだけど。一応確認のために。
「うん、凛とは……オーストラリアで会った」
「「オーストラリア!?」」
橘先輩と葉月の声がハモった。この二人、仲がいいんだな。すると、橘先輩は思い出したように、ぽんっと自分の手を打った。
「あっ!思い出した!海乃君って、確か水泳の選手で…オーストラリアに留学したって」
「えっ、じゃあ、競泳やってたんじゃん!」
嘘つきー!と葉月の攻撃をのらりくらりかわす僕を、七瀬先輩はじっと見ていた。
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