高尾と！

２月１４日、僕はこの日があまり好きじゃない。


「栄司君はい！」

「あ、ありがとう」


手渡しだったり机に入っていたり……要するにチョコの大量攻撃を受けるのだ。僕、甘い物は苦手。

まあ、そんな甘い物が苦手な僕だけど、今年は頑張った。その成果を高尾に渡すため、今、高尾の部屋にいる。


「栄司、これ、かーちゃんから」

「ありがとう。はい、高尾に」

「おーあんがと！栄司のお母さんのチョコ、美味いんだよなあ」


うっとりする高尾に僕は苦笑する。


「今年は僕からのも入っているんだ。日頃の感謝の気持ちっていうか」

「マジか！！うわ、食べたい…！でも、う、もったいない、し……」

「食べればいいじゃん」


もったいないって。また暇があれば作るし、そんな貴重な物じゃないぞ。高尾はあーどうしようと唸っていた。


「また今度作るから早めに食べて」

「えー、でも…ちょっ、栄司何すんだよ！」


高尾がいっこうに食べてくれないから、僕は紙袋から包装された箱を取り出した。その箱からチョコを一粒指で取り、高尾に向けた。


「高尾、あーん」

「あ、あーん」


ぱくりと高尾の口に入っていくチョコ。あ、高尾の馬鹿、指ごと食べるなよ……！

ぺろりとチョコごと指を舐められて、悪寒にも似た感覚が背中に走る。

高尾がわざとそれをしているのか、していないのかは分からないけど。


「っ、高尾、のバカ……！」

「んー栄司の指うまかった」

「チョコは美味しくなかった…？」

「チョコも美味い。ありがとな」


赤くなった頬を誤魔化すように「どういたしまして」と素っ気なく答えた。舐められた指はじんじん熱くなっていた。

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