バレンタイン小説 | ナノ

テツ君に!


今日はバレンタインだね!今朝、顔を合わせて姉さんが開口一番に言った台詞がこれである。


「今年はいくつもっらえるかな〜♪」

「一つだけじゃないですか」

「な、なんで!」

「だって…姉さんに友達がいもががが」


喋っている途中だから口を塞がないでほしい。視線で訴えるとしぶしぶといった様子で離してくれた。


「まあ、私の交遊関係は置いておいて!えーっと、ちょっと、待ってて!」

「はあ……」


バタバタ走っていく姉さんの背中を見て、転ばないか心配になった。一応運動神経はボクよりいいし、いらない心配だったか。


「はーいっ、テツ君にこれあげるね。ホワイトデーに3倍で返してね」

「それならいりません」

「えー!じょ、冗談だから!受け取ってよー!」

「……仕方ないですね」


綺麗にラッピングされた箱をグイグイ押し付けられた。まったく、面倒な姉だと思いながら開けると、バスケットボールの形をした大きなトリュフが佇んでいた。


「こ、こんなおっきな物を…」

「えへへ、頑張って作ってみたんだ!食べきれなかったら、私も手伝うよ?」


確かにこんなサイズを食べたら、気分が悪くなるかもしれない。まあ、そんな不安は置いておいて。


「姉さん、少し早めですが、お返しを」

「え?なになに?」

「ちょっと顔を近づけてください」


不思議そうに少し見上げる姉さんの頬に顔を近づけた。朝の冷気によって冷やされたのか、冷たくて気持ちいい。


「テ、テテテテ!?」

「姉さんって、自分にされるのは本当に苦手ですね」


そこが可愛いところなんですけどね。ボクは頬が緩むのを感じた。

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