バレンタイン小説 | ナノ

赤司に!


どっさり。

その表現のごとく、黒子セツナと赤司征十郎は、互いに山のようにあるバレンタインの戦利品を両手に抱えていた。

ちょうど、体育館の入口で。


「何してるんですか……二人とも」


普段大人びた言動をする二人のアホな行動が目についたのか、黒子テツヤが呆れたように言った。


「何って、勝負に決まっているだろう」

「そうだ。赤司との負けられない戦いだ」

「はあ……」

「な、何をしているのだよ!?」

「ああ、緑間か。ちょっと私のチョコを持ってくれないか」


呆れて何も言えないのか、緑間は言われた通りにセツナのチョコを7割ほど持った。


「それで、何が負けられない戦いなんですか」

「俺が黒子先輩に質問したんだ。『先輩はいくつ貰った』のか」

「私は数えきれないほど、と言ったら、赤司が嘲笑した」

「あー……」


黒子は面倒な揉め事に首を突っ込んでしまったと確信した。セツナの戦利品を抱えている緑間もそう思ったのか、小さく嘆息した。


「数えてみるか」

「そうですね」


二人はしゃがみこみ、一つずつ数え始めた。緑間はようやく荷物を下ろせて楽になったようだ。肩を労うように、ぐるぐると回している。


「9……私は129個!」

「129個……同点ですか」



悔しそうに肩を落とす赤司に、セツナは小さな小包を手のひらに乗せて差し出した。


「これ……」

「私からの、バレンタインチョコだ。言っておくが、義理だからな」

「ふっ…ありがとうございます」

「あれ、赤ちんと先輩、何してんの?」

「ああ、紫原か。ちょっとな」

「紫原はいくつ貰ったんだ?」

「ん〜ざっと200くらい?」


その言葉に二人は凍りついた。黒子と緑間は紫原に菓子がないか聞かれたが、首を横に振った。


(紫原に……!)

(盲点だった…)

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