バレンタイン小説 | ナノ

日向君に!


部室を開けると、死体のようにだらりと倒れているバスケ部のみんながいた。よくみたら日向君もいる。


「ね、ね、どーしたの?」

「どうしたも…こうしたも…皆、カントクのチョコを……食わされて…」

「うわ、可哀想〜」

「……笑うところじゃねえだろセツナ…」


いやあ、日向君が苦しんでいるのを見てたら、昔を思い出しちゃって。そう言ったら、彼はさらに眉の皺を深くした。


「なんか、俺…セツナの恨みを買ったか…?」

「んーべつに?ほら、日向君が私にマネージャーになってほしいって、頼んでいた時もしかめっ面だった」


ぐに、と眉間に刻まれた皺を押すと、口を尖らせた。あれ、耳真っ赤。


「そりゃあ…セツナがなかなか入ってくれなかったから……」

「ふーん、そっか。じゃあ日向君が一気に笑顔になる物をあげる」

「物?」


じゃじゃーんと言いながら、綺麗にラッピングした小袋を日向君の顔に押しつける。ぐいぐい。


「ん、も、うぜえ!」

「ほらほら起きてー」

「はいはい。何これ。俺に?」

「どうせ日向君は、リコちゃんしかもらえなかったんでしょ?」

「まあ……」


まだ顔が青い日向君の頬に、赤みがさしてくる。


「だから、義理だけどあげるね、って」

「おう…サンキュ」


恥ずかしそうに頭をかく日向君。私も何となく恥ずかしくなって(義理なのに)メガネのブリッジを押さえてしまった。

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