漆黒の海に浮かぶ

おまけ

あれから数年経った。私は大学を卒業し、就職した。就いた職業は、東京のとある事務員。日々慣れない作業にあたふたしながら、奮闘している。


「何年ぶりだろ…。ここに来るの」


あの学生だった私が、テツヤ君と訪れた穴場スポット。誰かが整備しているのか、未だに綺麗だ。下を見下ろせば、相変わらずキラキラ輝くイルミネーションやビルの光が見られる。


「テツヤ君、何してるかな…」


そう呟き、冷たくなってきた肩を抱きしめた。そろそろ帰ろう。こんな場所、お一人様で来るところじゃあない。

帰路についていると、男性とすれ違った。彼もまた、お一人様なのかしら。でも、何となくテツヤ君の雰囲気に似ていたなあ。


「……人違いか」


そう思い直しバックの紐を肩に掛けて、私はまた歩み始めた。数年間、縛られて止まっていた足を動かし、両手を大きく前後に振る。


「早く、帰ろう」

[ 2/18 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -