オモチャの誓い

池袋の街もクリスマスの装いに変わっている。隣にいる正臣君は、ナンパの失敗談や面白い話を途切れることなく続けている。

私はそれにただ相づちを打つだけ。ふと、高価な宝石屋のショーウィンドウが目に入ってきた。


「何なに?指輪か…。高いな〜俺達にはまだ買えねえな」

「そうだね。あ、マックに行こっか」


中学生の私たちの財力は知れている。スターバックスですら気後れして入れないのに、あんな宝石屋なんて到底無理。でも、あの子と差をつけたいなら、


「麻里?どうかしたか?」

「う、ううん!何でもない。ちょっと考えてただけだよ」

「そっか。それならいいんだけどよ」


正臣君はいつもの楽しそうな表情を険しくさせた。どうしたのだろう。何か私が変なことでもしちゃったのかな?


「麻里。左手を出して、目をつぶって」

「こう…?」


手を差し出し、目を閉じる。何かが私の指を通ってきている。正臣君が「いいよ」と言って、すぐさま左手を見た。

そこにはキラキラ光る可愛らしい指輪があった。驚いて正臣君を見たら、恥ずかしそうに顔を押さえていた。


「あの、さ。本当は立派なやつをあげたかったけど…。やっぱり、難しいな」

「嬉しい…!正臣君から貰えるなんて。これって、こ、婚約指輪、とか?」

「うん、大人になったら、ちゃんとしたのを麻里にあげたい。それまでの、約束な」


私はもちろんと頷き、指切りげんまんをした。おもちゃみたいな可愛い指輪が、本物に見えた。


Merry Christmas!!

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