この広い世界中で
ボクは途方に暮れていた。キラキラ輝くイルミネーション、行き交う人々、さっきから降ってくる雪。全てが、嫌になる。
「祐希…どこにいるんですか……」
思わず涙声になってしまう。ボクは祐希とはぐれてしまい、迷子になっていた。そして、ボクは人目につかないくらいの影の薄さだ。部活では使えるが、こういった時には厄介者だ。
「どう、しよう……」
ぎゅうっとコートの裾を握る。今日のためにかっこよくしようとしたのに、台無し。
「祐希……」
「テツヤごめん!!」
「えっ…?」
「っはあ…。本当に、ごめんっ…!目を離した瞬間さ……げほっ!げほっ!」
「……どんだけ走ってきたんですか」
「えへへ、テツヤが泣いているような気がしてさ」
へらへら笑う彼に怒る気も起こらず、目尻に浮かぶ涙を指で拭って「泣いてなんていません」と否定した。
「そっか…。でも、ほんとによかった」
「っ、ここ外ですよ…!」
「いいの、いいの。周りのカップルだって抱き合っているし、テツヤは可愛いし」
「可愛くないです」
そう言ってむくれるが、祐希は取り合ってくれない。彼のコートから伝わる温もりに目を細める。頭上では、祐希がボクの頭に顎を乗せている。重い。
「メリークリスマス、テツヤ」
「メリークリスマス、です」
キラキラ輝くイルミネーション、行き交う人々、さっきから降ってくる雪。全てが、好きになった。
Merry Christmas!!
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