お久しぶり
俺と紀田が歩いていたら、目の前からファーコートを着た男が歩いて来た。まだ春なのにファーコートなんて。
「あれ、紀田君じゃないか」
「臨、也さん…」
「ハハ、久しぶりってわけでもないか。まだ1ヶ月経ってないしねえ」
「……そう、っすね…」
なんか紀田の顔がめっちゃ強張ってるんだけど。横目で紀田を心配していたら、ファーコートの男(イザヤさん?)がこちらを見てきた。
イザヤさんは結構イケメンだった。だが、なんとなく浮かべている笑みが胡散臭い。
「こっちの子は紀田君の友達?」
「あ…はい、そうですけど」
「へえ。俺は折原臨也、よろしくね」
「結城啓です。こちらこそよろしくお願いします」
「そういえば、今日は竜ヶ峰君いないんだ」
「…そうっすね」
「ふうん、そっか。またね、紀田君、結城君」
それを聞くと満足したのか、折原は颯爽と去って行った。その瞬間、紀田はその場に座り込んでしまった。
「お、おい、大丈夫か?」
「わり…。結城は、黄巾族って……知ってるか?」
「…知ってる。連れに誘われて名前だけ入ってた」
「……なら、よかった」
ふうっと息を吐いた紀田は、勢いよく立ち上がった。そしていつものように、笑った。
「すまん、迷惑をかけたな」
「別にいいよ。気にしてないし」
「……帝人には秘密だぞ。アイツ、今は杏里にメロメロだからな」
「メロメロって死語だろ」
「なんだと!?」
ま、折原って奴の関係が知りたかったけど、別にいいや。