恐怖症のワケ


数日間の特訓のおかげで、杏里と対話するぐらいはできた。未だに目を合わさねーけど、前の結城より成長してる。

帰り道、同じ方向だから結城と二人きりで帰っていた。その間、結城をちらちら見るお姉さま方がいる。なんか…悔しいわ。


「どうだ、結城?」

「紀田のおかげで俺、なんとか克服できそう」

「克服した暁には、ブクロでナンパだ!そういや、ずっと気になってたことがあったんだけどよ」

「何?」

「なんでお前、女性恐怖症なワケ?」


何気ない質問だったのだが、結城は顔を青くして身体を強張らせた。あれ、俺、地雷を踏んだ?


「……師匠の紀田だけには、教えておく」

「おう……」


いつもより真剣な表情の結城に固唾を飲む。


「小さい頃、俺は女の子に間違えられるほど可愛かったみたいだ。そんで、母親もノリノリで俺に女装をさせていた…。
そんなある時、事件は起きた……」

「事件…?」

「母親と女装したまんま散歩をしてたら、綺麗なお姉さん方に囲まれてよ……。あれは一種の恐怖だ。
で、当時、ちょっと人見知りだった俺は、女装とか女性とかが怖くなった」


終わり。ふつうでつまんなかったなって言う結城に、俺はガシッと双肩を掴んだ。


「俺は羨ましいぜ…!あ、でも、結城は怖かったんだったな……。まったく俺たち(イケメン)は大変だよな」

「紀田もなんかあったのか?」


一瞬、中学の時のことを思い出して言おうとしたが、コイツに言うことじゃねえなって判断した。

その代わり結城の背中を馬鹿みたいに叩いて、イケメンすぎて大変って言っといた。




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