女子に慣れろ
終礼が終わった後、俺は結城を掴まえた。そのまま、隣のA組に連れていく。
「え?な、なに?」
「いきなりナンパつっても、女子に慣れていなきゃダメだろ。ということで、杏里と仲良くなってからな!」
「き、紀田君…?あの、この人は?」
「結城啓だ。俺の弟子」
「へえ、正臣の…弟子!?」
おうと帝人に頷いた。何故か帝人と杏里は固まっている。それで結城も固まって、俺の背後に隠れている。
「隠れてないで、杏里に自己紹介しろって」
「むむむむむ無理無理!!だって、そそそ、そ、園原さんって、女子じゃん……!」
「なに当たり前のこと言ってんだよ」
べしと結城の頭にチョップした。帝人は困惑した顔で「経緯を教えてくれない?」と聞いてきた。
◆◇◆
「……というわけ」
「正臣の弟子になってもナンパは成功……あ、結城君はかっこいいから成功するかもね」
「いやいや、かっこよくないって…第一、園原さんにも慣れないし……」
「そういえば、なんで杏里の名字を知ってんの?」
俺がずっと疑問に思っていたことだ。すると結城は、苦笑しながら恥ずかしそうに答えた。
「入学式の時に、綺麗で可愛い子だな、って。友達からA組に可愛い子がいるって聞いて、園原さんの名前を知ったんだ」
へえ、女性恐怖症の割には、そういうところも見ているんだな。