彼女欲しい
俺は結城啓、平凡な高校生だ。ただ、ある事件から女が苦手になってしまった。だから紀田のナンパ術を、俺は修得したいと思っていた。
「ま、今日はもう遅いし、明日の放課後からな」
「ああ。ありがとうな」
「いーってことよ!」
紀田が笑うと、まるで花が開いたような、辺りが明るくなるのだ。俺は改めて、紀田正臣という男に憧れた。
◆◇◆
翌日、目が覚めてからずっと遠足が楽しみな小学生の様に浮き足立っていた。
朝食を食べ、俺は洗面所にいた。ナンパするといっても、いつものように櫛を通して、寝癖をちゃちゃっと直すだけ。んー、これでいっか。
鞄を手に持ち、母に「行ってきます」と声をかけた。扉の向こうから「んん…行ってら……」と寝惚けたような声が返ってきた。
「さて、行くか」
◇◆◇
「紀田君おはよー」
「おはよ」
やっぱり紀田は人気者だなあ。友人と話しながら、紀田を目で追っかけている。
「あー俺も彼女ほしいな〜」
「そんなに欲しいのかよ」
「ああ?結城はいいよなぁ。イケメンだから選び放題じゃねぇ?」
いや、まず女子が苦手なんだって。俺はそう言うこともできず、笑いながら「イケメンじゃないし、違うって」と否定した。
俺も…彼女が欲しいなあ。