弟子入り
「お願いだ!俺を紀田の弟子にしてくれ!」
「……はあ?」
夕日の優しいオレンジ色が教室を染め上げていく放課後。
なんともセンチメンタルになりそうなこの場面で、クラスメートの結城啓は頭を下げ、俺に弟子入りを申し込んできた。
結城啓――俺の中では、結構イケメンな奴だと思っている。
明るく朗らかで、俺より身長が高く(少し見上げるくらいな!)、ちょっと色が抜けた髪から俺と同じような系統だと思っていた。
「ごめん、主語がなかったな。俺…女性恐怖症なんだ」
「へえ……」
「それで、よくナンパをしている紀田に、ナンパのやり方を教えてほしいんだ。そしたら、克服できるかもしれない」
「あー、でも、結城くらいのイケメンなら教え無くても成功するし、克服できるって」
第一そんなことするのが面倒なんだって。これは心にしまっておこう。
俺の言葉に結城は眉をしょんぼりと下げた。
「いや、俺は紀田みたいに顔が良くないし、気の利いた言葉なんてかけられなくて……」
「お、おう…」
どうする、俺!あ、でも、ちょっと考えてみろ。このイケメン君と一緒にナンパしたら、成功率がグーンと上がるんじゃね…?
「よし、分かった」
結城の肩を掴む。びくりと顔を上げたイケメンにニヤリと笑う。
「結城を、俺の弟子にしてやる!」