あなたはナンパを理解していますか?
俺と結城は池袋駅前に来ていた。十分前ぐらいから、来ていた。
俺の隣に立つイケメンは涼しい顔をしているが、内心パニックになっているだろうと想像したら笑いそうになった。
「おい、結城。ほんとにすんの?」
「え、ああ、もちろん!男に二言はない!」
「だったら話しかけねーと。ほら」
「う、わあ、あ!?」
トンっと軽く強張っている背中を押してやれば、歩いている女子高生二人組にぶつかった。
「いて……。ごめん!大丈夫?」
「マジ最あ…」
尻餅をついた女子高生は、結城を見て硬直した。おー早速イケメンパワーが活用されている。
気づかれないうちに近づくと、結城は俺を睨んで、尻餅した女子高生に「はい」と手を差し伸べた。
「あ、ありがとうございます……」
「ほんとごめん!じゃあ」
「おいおい結城、お詫びをしないまま帰るつもりかぁ?」
「……ごめん、今から時間をちょっともらってもいいかな?」
「「〜〜〜っ、もちろん!」」
おい結城、今ちょっとため息吐いただろ。女子高生は見事、結城のイケメンキラースマイル(名付け親、俺)にやられて、案外サクッと簡単に近くのファミレスに入店した。
……俺がナンパする時は、こうも上手くいかないもんなんだけどな。