真面目に
紀田が俺の腕を掴んでいた。唖然として、俺はただ彼を見つめるしかなかった。
「結城!」
「は、はい」
「帰るぞ!」
「えっ、ええ!?」
「紀田君、俺はまだ話がしたいんだけどなあ?」
にこやかに折原は言うが、その背後はどろどろと真っ黒に塗りつぶされている。邪魔をされて明らかに不機嫌といったご様子。
「……すんません!」
「えっ、ちょっと、うわあ!?」
ぐいっと紀田に引っ張られて、思わずよろけた。その姿勢のまま俺は店の外に出ていた。
「お、おい紀田!こんなことしたら…!」
「……わかんねえ。俺、なんでこんなことしたんだろ…」
「分かんないって……。もしかして、さっきの話聞いてた…?」
俺の問いに、紀田は顔を俯かせながら頷いた。こいつが黄巾族の将軍ってことは知っていた。推測だが…沙樹と何らかの関係があったんだろう。
「なあ、結城」
「お、おう」
「俺も……沙樹を殺した」
「……え?」
「沙樹が折原臨也に入れ込んでいたのは知っていた。付き合っていたけど、そこまで縛るのは俺的に好きじゃなかった。けど、やっぱりあいつは盲目的に折原を、さ……」
「……紀田」
「な、なんだよ?」
この時、俺の頭にはもうこの考えしかなかった。紀田の手を握りながら、力強く声を出した。
「ナンパ、行こう」