見たい、見てしまった
昨夜、俺は興味本位で入ったグループ“ダラーズ”の初集会に参加した。
集会って言っても、ただ集まってリーダーから来たメール『今、ケータイの画面を見てない奴が敵だ。何もせず、ただじっと見つめろ』という命令に従っただけ。
そこで、見てしまった。竜ヶ峰が女性と対峙していて、スッと何事もなかったかのように集団に溶け込むのを。
すると途端に、俺のケータイは鳴り出した。周りの奴が持っているケータイも、共鳴するように鳴り始めた。
中心にいた女性は、まるで世界が敵に回ったように感じただろう。不規則に鳴るメロディ、不協和音が更なる不協和音を呼ぶ。
流石に吐き気を覚えた俺は、輪の外へ逃げ出した。すると、あの黒いファーコートの男、折原が遠巻きに見ているのが目に入った。
そそくさと声をかけられないように行動したつもりだったけど、折原にバレてしまった。
『あれ、結城君?』
『……ども』
『こんばんは。まさかこんなところで再会できるなんてね』
『はあ……』
『不思議なものだね。人の繋がりというのは』
折原はそう言って前を向いた。もう用は済んだのかと俺は思い、去ろうとしたら呼び止められた。
『ああ結城君、君は黄巾族って知ってるかい?』
『知ってます』
『もしかして所属してた?』
あの日のことが瞼の裏で映し出された。俺は緩慢に首を振り、笑った。
『まさか。俺は黄色より、青色が好きなんです』