憂side
僕がこうして屋上に来るようになったのはいつからだろう。
帝光に入学した時から?クラスに馴染めず疎外感を感じた時から?テツヤと大喧嘩した時から?
「…答えは、全部か……」
少女の言霊
友達もいなくて、テツヤも離れちゃって、僕はひとりぼっち。
寂しかった、誰かに気づいて欲しかった。でも、誰にも気づいて欲しくなかった。クラスメートにも、テツヤにも、そして黄瀬涼太という人にも。
黄瀬涼太はよく分からない。たぶん、好い人なんだろう。僕があんなに撥ね付けたのに、部活でくたくたになった身体で僕の探し物を探してくれた。
毎日、昼休みに弁当を持参して来ては、一緒に食べないか、危ないからこちらに来い、とまるでお母さんみたい。
「訳が分からない……」
あの奇妙な出会いから10日経った。幼なじみのテツヤは、一年ここに通いつめた。黄瀬涼太は、あと何日で辞めるのだろうか。
また、僕から人が離れていくのだろうか。
「怖い、怖いよ…」
ぶるぶる震える自分の頼りない薄っぺらい肩を抱いて、薄くオレンジ色に染まる下界を見下ろす。
ここからだと、体育館に向かう生徒の姿が豆粒並みに見える。あちらは、こっちなんて見向きもしないだろうけど。
「あ、黄瀬涼太……」
見慣れてしまった黄色い頭が、チラリとこちらを見る。僕に気づいたのか、大きく目一杯腕を振る。
「……犬か」
ぼそりと呟く。黄瀬涼太のバイバイに、僕は振り返さなかった。だって、テツヤがその先でこちらを見ていたから。
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