屋上にて | ナノ


彼女が無くしたキーホルダーというのは、大層大事な物らしい。熊の形で、色は水色、金色のボールチェーン。

その探し物を話す時、彼女の目は不安から懐かしいものを慈しむような色になった。

俺は、何となく、それがどういう代物なのかを予想できていた。


光に群がるもののように


「あ、あった!黄瀬、あったよ!」

「マジで!?ああ、ちょっと汚れてる……」

「あ……ありがとう、黄瀬くん」


大事そうに少し汚れてしまった熊のキーホルダーを握りしめる憂に、俺はたいしたことしてないよと言った。


ようやく帰路につけた俺達は、暗くなった道を歩いていた。その道中、彼女がその熊のキーホルダーについてぽつりぽつりと話し出した。

「これは……幼なじみがくれたんだ」

「へえ。やっぱり」

「……僕の真名を教えたのは、やはりテツヤか」


ま、まな…?本名という意味か?よくわからなかったけど、適当に頷いて「部活終わりに教えてくれた」と言った。


「……ふん。これをくれたのは、いつもテツヤがずっと…」

「ずっと?」

「い、いるって…意味。でも、離れちゃった。僕のせいで」


キュッと唇を噛みながら、彼女は小さな身体を震わせた。俺は何故かまた頭に手をのせた。


「大丈夫、たぶん黒子くんは君を心配してるっス」

「う…うん、そうだといいな」


にこりと笑った彼女は、今までよりも可愛かった。そして、その笑顔に胸が締め付けられた。なんだ、これ。




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