「あなた、誰なのって聞いてるんだけど」
「あ、ああ、俺は黄瀬涼太。君は?」
「…フランシス・ディック・リジキュラスよ」
「……は?」
確かに顔は整っているがハーフとかクォーターとかには見えない。
混乱している俺に、フランシスなんちゃらはフェンスの網を握りしめ、眉間に皺を寄せ、口元に笑みを浮かべなから吐き捨てるように言った。
「憐れみをありがとう」
やっぱり接触すべき人間じゃなかった。こういう子には近づかないと、散々分かりきっていたはずなのに、どうして。
「で?僕に用があるの?」
更に僕っ娘である。もう俺は「すみません、なんか、もうごめんなさい」と言って走り去りたかった。
でも、ここで逃げてしまったら、何かに負けた気がする。負けず嫌いな俺のプライドが許さない。
「実はファンの女の子に追いかけられちゃってて。で、偶然、『立ち入り禁止』っていう貼り紙があったから、ここまで来ないだろうと思って」
「そう。僕を止めに来た訳じゃなかったのか」
「えっ、止めてほしいの?」
「違う!貴様なんかに…」「ていうか、そこ危ないっしょ。こっち来たら?」
おいでおいでとしたが、彼女は更に眉間の皺の本数を増やした。あれ、逆効果?
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