屋上にて | ナノ


それは本当に偶然で、故意による出会いじゃなくて、というか、出会いたくなかった。

佐原憂という、常に自殺を考えてる少女なんかに。

スカートの中の嘘


5月某日。昼休みに、俺はいつものように女子を振り切っていた。すると、ふと目についた『立ち入り禁止』という貼り紙に、ひらめいた。


「ここなら…イケる」


そう一人ごちて、ゆっくり、ゆっくりとドアノブを回す。ギ、ギ、ギギ…と不穏な悲鳴が耳に障る。

そろそろとドアを開けてみれば、さっきまで居た薄暗がりから5月の陽の光が目に刺してくる。痛い。


「見え、ね……」


ようやく目が慣れてきた。チカチカする眩しい陽光は、俺を優しく温かく包み込んだ。

ただ、ここまでは予想通りだった。予想外だったのが、フェンスを越えて人が立っているという事実だ。

スカートを履いているからおそらく女子、なんだろう(顔が見えないから、もしかしたら男かもしれない)。俺が履いているスラックスと同じ白いスカートが風の中で泳いでいる。

こういうのには声をかけちゃいけない。本能が、そう告げていた。青峰っちほどじゃないけど、大体俺の直感は当たるのだ。

しかし、ずっと無視、いない者扱いをするのは少々俺には厳しかった。だから話しかけてみた。


「あの…そこ、危ないよ?」

「………誰?」


そういえば、女子の睨んだ顔を初めて見たと俺はのんきにそのときは思った。




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