「憂!」
「憂ちゃん!」
「二人とも静かにするのだよ」
「「すみません……」」
憂ちゃんが倒れたと聞いて、ショートが終わるのも待てずに保健室に駆けつけた。 熱が生まれるとき
俺達が来るまで、保健委員だった緑間っちが看ていてくれたらしい。緑間っちは「あまり騒ぐなよ」と釘を刺して、部屋を出ていった。
「俺が教室に行ったらって言わなきゃ……」
「黄瀬君のせいじゃありません。これは憂にとって、大きな進歩です。まあ、昨日緊張しすぎて、寝不足で倒れたんでしょう」
本当、バカみたいにまっすぐです。そう言う黒子くんは、苦笑しているけど、憂ちゃんの頭を撫でる手つきは優しいものだ。
「黒子くんは、ほんと憂ちゃんが好きだね」
「はい、好きです」
「えっ」
「幼なじみとして、恋愛対象として見ていますから」
「へ、へえ〜」
なんだこりゃ。宣戦布告と言わんばかりに、黒子くんは俺をじっと見つめた。
「黄瀬君は、どうなんですか」
「えっ?俺は…よくわからない、かな」
「分からない?」
「俺、今まで女の子をガチで好きになったことがなくて。ここまで接するのは、桃井っちぐらいじゃないかなー」
「そうですか。所詮、黄瀬君は、その程度の感情を持っていないんですね」
「は…?黒子くん、どういう、」 「テツ、ヤ…?」
ちょうどいいタイミングで、憂ちゃんが目を覚ましてしまった。黒子くんは何事もなかったかのように、彼女に「今日はもう帰りましょう」と告げた。
その時、彼女は申し訳なさそうに「ごめんね」と言った。
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